ハングク?ポルスカ?スオミ? 日本語読みと違う国名
今年(2026年)のニュースに、「ナウルが正式国名を、ナオエロに変更」というものがありました。ナウルは太平洋に浮かぶ小さな島国で、「ナウル=Nauru」という読み方は、英語、つまり、植民地時代に名付けられた国名です。一方の「ナオエロ:Naoero」は、現地の島民による呼び名で、こちらが「本来の発音」として、正式国名になったといういきさつがあります。
これを受けて、Japanも正式国名を「NipponあるいはNihon」にする…ということは当分起きないでしょうが、実は日本やナウルのように、国際的な呼び名と自国での呼び名が違う国というケースはたくさんあります。今回はこうした国を紹介しようと思います。
漢字文化圏の国
韓国(大韓民国)
日本語では「かんこく」、英語では「South Korea」あるいは単に「Korea」と呼んでいるこの国。
現地の韓国語では、「ハング(ク):한국」と発音します。(最後の「ク」はほとんど発音しない)。「大韓民国」は、「대한민국」:テハンミング(ク)です。
「韓流」を日本でも「ハンりゅう」と呼ぶのは、「韓」を「ハン」と読むからなんですね。
英語読みの「Korea」は、以前の記事にも書きましたが、かつて朝鮮半島にあった国「高麗(こうらい)」が転じたものです。
なお、北朝鮮では自国を単に「朝鮮(조선:ジョソン)」と呼んでいます。
中国(中華人民共和国)

日本語では「ちゅうごく」、英語では「China」と呼ぶ中国。
先に「China」について触れると、これは古代の王朝「秦」が転じた呼び名で、東シナ海やインドシナ半島の「シナ」も同じく「China」から来た言葉です。
現在の国名は、中国語でも当然漢字表記の「中国」。「中華人民共和国」の表記は「中华人民共和国」となります。
中国語の発音を日本語で表記するは難しいのですが、無理やりカタカナで書くと、中国は「チョングオ」、中華人民共和国は「チョンファレンミンゴンフアグオ」となります(Google翻訳を耳で聞いて、無理やり書き出してみました)。
他にも、地名の「北京」「武漢」「広州」「長江」「桂林」は、それぞれ
「ベイジン」「ウーハン」「クワンチョウ」「チャンジヤン」「クイリン」。
これだけ聞くと、何のことかわかりませんね(^^:)
漢字という日中で共通に使われる言葉は、「山」がマウンテンを意味することが分かるなど、便利である一方、異なる発音が誤解や新たな苦労を招く、という点で一長一短なんだな~と思います。
なお、台湾は英語でも中国語でも「Taiwan/台湾」です。
言われれば、あ~なるほど、ってわかる国
カンボジア

現地カンボジア(クメール)語では「カンプチア:កម្ពុជា」です。これがヨーロッパ人の耳には「カンボジア」に聞こえて、今のような呼び名に転じたそうです。
イエメン

現地のアラビア語で、「アル=ヤマン:اليمن」。イエメンに限らず、アラビア語圏の国の多くは、国名の前にアラビア語の冠詞(theみたいなもの)の「アル」がつきます。

スペイン
スペイン語では「イスパーニャ:España」です。「Spain」と違って「E」がついているのは、スペイン語の文法上必要だからだとか。アメリカに住むスペイン語話者(メキシコ人など)を「ヒスパニック」といいますが、この語源も、イスパーニャです。
ポーランド

ポーランド語で「ポルスカ:Polska」。スラヴ系の言葉で「野原・平原」を意味する「ポーレ」に、同じくスラヴ系の言葉で「~の地」を意味する「スカ」が付いて、「平原の(民の)国」という国名になりました。英語読みでは「ポーレ」はそのまま使い、「スカ」を同じ意味の「ランド」に置き換えて、「ポーランド:Poland」となりました。
ドイツ
ドイツ語では「ドイチュラント:Deutschland」。これは英語の「ジャーマニー:Germany」より日本語読みの方が現地寄りという、わりと珍しい例かもしれません。「ドイチェ」は、「民衆」という意味で、これに「~の地」という「ランド」が付きました。「ジャーマニー」は、かつてこの地に多く暮らしていた「ゲルマン」民族の英語読みです。
ちなみにフランス語では「アルマーニ」と、また全然違う読み方になります。これはゲルマン民族の一派「アレマン人」からきているとされています。
ツバル
英語、ツバル語では「トゥヴァル:Tuvalu」。これは日本語表記の問題でしょう。本来日本語に「トゥ」も「ヴァ」も無かったため、無理やり「ツ」と「バ」で代用したわけです。
英語の「Two」もいまだに「ツー」って呼ぶ人が多いですからね…
同様に世界一小さい国、バチカン市国も、英語で「ヴァティカン:Vatican」。イタリア語で「ヴァティカーノ:Vaticano」です。
わかるか!!っていう国名
世界を見渡せば、自国での呼び名と英語や日本語での呼び名が全く異なる国も少なくありません。大抵はそもそもの語源が違う、というパターンです。ここからは国名の由来も含めて解説したいと思います。
オランダ

オランダ語で「ネーデルラント:Nederland」、英語名では「ネザーランド:Netherlands」。いずれも「低い土地」という意味。ベルギー、オランダ、ルクセンブルクを合わせた「ベネルクス三国」の「ネ」も、この呼び名から来ています。
では、日本での呼び名「オランダ」とは何なのかというと、オランダを構成する州の一つ「ホラント:Holland」から来ています。首都アムステルダムが位置しており、オランダでも中心的な場所なので、オランダ全体を指す名前にもなりました(関東に行くことを「東京に行く」と言うような感じ?)。ポルトガル語でもオランダを「ホランダ」と呼び、戦国時代にこれが日本に伝わって定着した、という経緯のようです。
インド

ヒンディー語では「バーラト:भारत」で、古代インドの叙事詩『マハーバーラタ』の「バーラタ」と同じです。これはインドにいたとされる伝説の王あるいは民族の名前です。
「インド:India」は本来インダス川流域の「シンド」という地名が語源で、これも「川」を意味する地名です。これが、インドという国、というより南アジア全域を漠然と指す呼び名となりました。実際イギリスが南アジア全体を植民地化して「イギリス領インド帝国」を築くまで「インド」という名の王国はありませんでした。
この「インド」が転じて、「ヒンディー」「ヒンドゥー」「天竺(中国語でテンドフ)」などの名前が生まれました。

ハンガリー

以前の記事にも書きましたが、自国のハンガリー語(マジャール語)で「マジャロサーグ:Magyarország」。ハンガリー人の主要民族「マジャール人」の国という意味です。
外名の「ハンガリー:Hungary」は、かつてこの地を拠点にしていた集団名「オノグル」が訛ったという説、マジャール人とは別の遊牧民だった「フン人の地」という説など様々あります。
ギリシャ

ギリシャ語では「エラダ:Ελλάδα」あるいは「エラス:Ελλάς」と呼びます。古代ギリシャで自分たちポリスの住民を「ヘレネス」と呼んでいたことが、その由来となっています。ヘレネスは、神話に登場する女性「ヘレン」の子孫、というアイデンティティから来たものだそうです。
「ギリシャ」あるいはその英語名「グリース:Greece」は、古代ローマ人がこの地を「グラエキア」と呼んだのが始まりとされます。グラエキアの語源は、現在のギリシャに住んでいた一民族の名前だと考えられています。
エジプト

アラビア語では「ミスル:مصر」。これも以前の記事に書きましたが、これは「軍事都市」の意味で、もともとは首都カイロのことを指すものでした。
「エジプト:Egypt」の語源は諸説ありますが、古代ギリシャ人が、エジプト文明の都メンフィスを「プタハ神の聖域」という意味の古代ギリシャ語「アイギュプトス」と呼んだことから来ているというのが有力な説だそうです。その後、ローマ帝国がクレオパトラを倒してこの地を支配した際、属州の名前として、「アイギュプトス」がラテン語に転じた「エギュプトス」と名付けました。
つまりエジプトとミスルの違いは、名付け親がヨーロッパ人かアラブ人かの違いから来ているというワケ。
ちなみに古代エジプト人は、自分の国のことを「ケメト」と呼んでいたそうです。これは「黒い地」という意味で、周囲の砂漠(デシェルト:赤い地の意味)と比べて肥沃な場所という意味が込められています。だからタイムマシンでピラミッドの時代に行き、「エジプトはどこ?」と聞いても、「そんな国は知らん」と言われてしまうのだ!
フィンランド

フィンランド語では「スオミ:Suomi」。意味は「沼地」とか「湿地帯」という意味の「suo」が語源だとか。さすがは森と湖の国ですね。英語読みの「フィンランド:Finland」は、この地に住んでいた「フィン人」の地という意味です。

ジョージア

ジョージア語で「サカルトヴェロ:საქართველო」。これは、古くからコーカサス地方に住んでいたカルトリ人という民族名から来た言葉です。
なお、日本では以前、この国を「グルジア」と呼んでいましたが、これはロシア語読み(Грузия)。しかしこの国とロシアの関係が悪化し、グルジア政府から「ロシア語読みをやめてくれ」と要望があった結果、英語読みの「ジョージア:Georgia」となりました。こちらの語源にも諸説ありますが、キリスト教の聖人「ゲオルギウス」がこの地にやって来たことが由来という説があります。
アルメニア

アルメニア語で「ハヤスタン:Հայաստան」。「自分」を意味する「ハイ」に、「~の地」を意味する「スタン」がくっついた「私の土地」という意味です。
「アルメニア:Armenia」の語源となったのは「アルミン」という、古代ペルシャのダレイオス1世の碑文(BC5世紀)にも出てくる、古い地名です。
ブータン

ブータンの公用語ゾンカ語で「ドゥク・ユル:འབྲུགཡུལ་་」。「竜の国」という意味です。ご覧の通り、国旗にも竜が描かれています。
「ブータン:Bhutan」という呼び名にも諸説ありますが、古代インドのサンスクリット語で「チベットの端」あるいは「高地」を意味する言葉がもとになったらしいです。
モルディブ

モルディブの公用語ディベヒ語で、「ラーッジェ: ރާއްޖޭގެ」。「島々」という意味です。
日本語名「モルディブ」の元となったのは英語名「マーディヴズ:Maldives」。その語源は、古代インドで使われていたサンスクリット語の「マロドヘープ」という言葉だそうで、意味は「島々の花輪」。さすがは南国のリゾート。
クロアチア
クロアチア語で「フルヴァツカ:Hrvatska」。前半の「フルヴァト:Hrvat」の意味はよく分かっていないそうですが、「山の民」という意味ではないかというのが有力な説だそうです。これが他の言語に発音される中で変化し、英語では「クロアト:Croat」になったようです(ホンマかいな?)。
最後の「ツカ(スカ)」は、ポーランドの項でも書きましたが、スラヴ系の言葉で「~の地」という意味。これがラテン語系で同じ意味の「~ia」に変化し、ゲルマン語系の英語名でも「クロアティア:Croatia」となりました。
アルバニア

アルバニア語で「シュチパリア:Shqipërise」。語源はやはり諸説あるようですが「鷲」という意味だという説が有力です。国旗にも「双頭の鷲」が描かれています。
外名の「アルバニア:Albania」とは、ギリシャ語で「白い山」を意味する「アルバノイ」が語源だと考えられています。
モンテネグロ

モンテネグロ語で「ツルナゴーラ:Црна Гора」。モンテネグロ語を含むスラヴ系の言葉で「黒い山」という意味です。一方の「モンテネグロ:Montenegro」はラテン語で「黒い山」。意味は同じです。
面白いことに、アルバニアとモンテネグロは隣り合っていたりします。

ところで日本は?
最後に日本ですが、英語読みはJapan。これは日(ジツ)と本(ポン)という音読み=中国読み(ただし、日本語の音読みと中国語での読みも微妙に違うし、地域や時代によっても変わる)が西洋に伝わる中で変化したものです。
以下に主な言語での「日本」の読みを並べてみましょう。
韓国語:일본(イルボン)
中国語:日本(リーベン)
ベトナム語:Nhật Bản(ナットバン)
タイ語:ญี่ปุ่น(イェーポン)
タガログ語:Hapon(ハポン)
ヒンディー語:जापान(ジャパン)
アラビア語:اليابان(アル=ヤバン)
トルコ語:Japonya(ジャポーニャ)
ロシア語:Япония(ヤポーニャ)
ギリシャ語:Ιαπωνία(ヤポニア)
ドイツ語:Japan(ヤパン)
イタリア語:Giappone(ジャポーネ)
フランス語:Japon(ジャポン)
スペイン語:Japón(シャポン)
ポルトガル語:Japão(ジャポン)
スワヒリ語:Japani(ジャパニ)
う~ん、分かるような分からないような… 意外にも日本に近いアジアでの呼び名の方がバラエティー豊かな気がするのは、私だけでしょうか?