世界の自然と文化~オセアニア編~
世界の自然と文化。第2弾はオセアニアです。オセアニアは別名「大洋州」とも呼ばれ、その語源は「オーシャン」+「イア(地名を表す語)」となっています。
日本と国交を結んでいる国は全部で16あり、その他、アメリカやフランスの海外領土という扱いの島もあります。しかしそのほとんどは面積1万k㎡にも満たない小さな島国ばかりで、世界地図の上には「点」でしか表せません。
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オセアニアの地域区分
しかしながら、オセアニアで暮らす人々がすべて同じような人種や文化なのかというと、そうではありません。むしろ、太平洋によって島同士が何百キロ、何千キロも離れているため、独特の文化や風習を持っている場所が少なくありません。
オセアニア地域は、大きく4地域に分けることができます。それが、
メラネシア、ポリネシア、ミクロネシア、そしてオーストラリアです。(複数の特色が重なっている場所も多々あります)
オーストラリア
太平洋の中でダントツに存在感があるのが、オーストラリアでしょう。
実際、オセアニア総人口の約60%、総面積の約90%をこの1か国が占めています。他を引き離す別格の存在のため、書籍によっては「オーストラリアとオセアニア」、つまりこの大陸をオセアニアに含めないものもあります。
先住民アボリジニは6万年前には移住してきたと考えられています。ただ、近隣の東南アジアが湿った熱帯気候なのに対し、オーストラリアは乾燥した大地が広がっています。気候が全く異なるため、農作物や農耕技術が伝わらず、近代にヨーロッパ人の植民地となるまで大きな文明も築かれませんでした。
日本の20倍の面積ですが、富士山より高い山は無く、全体的に平たい大陸です。人口密度は1k㎡あたり約3人・・・
メラネシア
国で言えば、パプア・ニューギニア、ソロモン諸島、フィジー、バヌアツ、フランス領のニューカレドニアなどが含まれています。
「メラ」とは『黒』という意味(メラニン色素のメラもこの意味)で、直訳すると「黒い島々」となります。その由来は(一説には)全体的に浅黒い肌の人が島民に多かったから、と言われています。
ユーラシアやオーストラリアに距離が近く、島も比較的大きい傾向にあったことから、3つの「ネシア」の中では歴史が古く、数万年前から人類が居住していたと考えられています。
そのため言語のバラつきが大きく、この地域だけで千を超える言語が話されているんだとか。言葉が通じなくては、それぞれの島で交易ができなため、ピジン語という共通語が話されています。また島民の多くはバイリンガル、マルチリンガルなんだとか。
ポリネシア
「ポリ」とは『たくさんの』という意味。(多角形は英語で「ポリゴン」、エチレンが大量につながった物質を「ポリエチレン」と呼びます。)で、直訳すると「たくさんの島々」となります。
国で言えば、ニュージーランド、ツバル、サモア、トンガ、クック諸島、ニウエ、それにアメリカ領サモア、ハワイ、フランス領ポリネシア(タヒチなど)、イギリス領のピトケアン諸島、チリ領のイースター島などが含まれています。
大陸から遠く離れているうえ、島同士も数百キロ、数千キロの距離があるため、この地域への人類の進出は比較的最近のことでした。オーストロネシア系と呼ばれる、アジア人にも近い人々がメラネシアを経由してサモア、トンガ付近に移住したのが約3千年前。そこから先はさらに時間がかかり、ハワイ、イースター島へ進出したのは紀元後4世紀~8世紀頃、ニュージーランド上陸は11世紀以降と言われています。
歴史が比較的浅いため、非常に広大な海域に広がっているにも関わらず、ポリネシア系の言語はいずれも似通っています。
ミクロネシア
「ミクロ」とはもちろん『小さい』という意味で、直訳すると「小さな島々」となります。先のメラネシア、ポリネシア以外の、赤道以北に広がっている島々です。
国で言えば、ミクロネシア連邦、キリバス、ナウル、パラオ、マーシャル諸島、アメリカ領のグアム、北マリアナ諸島(サイパン等)が含まれています。(つまり、地域としてのミクロネシアと、国名としてのミクロネシアがあり、ややこしい事になっています)
ミクロネシアへの人類進出の経緯は複雑で、メラネシアやインドネシアからやって来た人々もいれば、ポリネシアから引き返して来た人もいるそうです。言語面ではミクロネシア系の言葉がおおむね用いられているものの、パラオ語、ヤップ語、マリアナ語といった、全く異なる言語が話されている場所もあります。
全体を通してみると・・・
太平洋の小島、という印象のオセアニアですが、これらの島々も、大きく分けて火山島とサンゴ島の2種類があります。
海底火山が噴火して、噴出した溶岩が固まってできたのが火山島で、ハワイ島やヤップ島、サモア、イースター島等が挙げられます。一方、サンゴ礁が盛り上がって海面に出てきたり、火山島が水没して周りのサンゴ礁が残ってできたのがサンゴ島で、マーシャル諸島、ナウル、ツバルなどがこの分類です。標高が低く、海面上昇の被害がより深刻なのはこちらの島々です。
大半の島々は熱帯気候ですが、オーストラリア沿岸とニュージーランドは温帯地域で、ここには現在に至るまでヨーロッパ系住民も多く住んでいます。それ以外の島々でも、キリスト教やアルコールなどが持ち込まれ、伝統的な社会に大きな変化を及ぼしました。
更に近代以降はアジア系の住民も多く移り住んでいます。距離的に近い日本系、中国系の人々は、オーストラリアやニュージーランドにも数多くいますし、フィジーでは3~40%の住民がインド系です。これは、フィジーもインドもイギリスの植民地だった過去があり、その時代に、労働者としてインドからやって来た人々の子孫というワケ。
これらを含め、オセアニアの島々は、いずれも欧米の支配下に入った歴史を持ち、ニューカレドニア(仏)やグアム(米)などは、今も独立国とはなっていません。その一部は、こうした大国の都合により核実験の舞台になったという、消えぬ過去を持っています。
小さくても忘れてはいけない、南の楽園と片付けてはならない島々が、そこにはあるのです!