歴史を1年でたとえると
気がつけばもう2024年も最後の月となりました。年齢とともに1年がどんどん短くなっている気がして、コワいですね。
1年といえば、地球の一生を1年でたとえる、というものがあります。
これによると、人類の誕生は12/31の夜11時過ぎ、つまり地球の歴史から見れば、人類の歴史がいかに短いのかが、よくわかります。
今回は、この「1年でたとえる」を様々変えて、時間の長さを実感していきたいと思います。
江戸時代を1年でたとえると・・・
まず、前提として以下の通りに設定します。
ある時代が始まった年を「1/1 0:00」、その時代が終わった年を「12/31 24:00」
とし、実際に起こった出来事の日付や時間までは考慮しない。
1年は365日(8760時間)ちょうどとし、閏年、閏秒などは無視。
計算はExcelを用いていますが、正確性は保障しません。だいたいこんな時期になるくらいに思っていただければと思います。
例として江戸時代を考えてみましょう。
一般に江戸時代は、徳川家康が征夷大将軍となった1603年から、徳川慶喜が大政奉還し江戸城を去った1867年までを指す事が多いです。翌1868年が明治元年なので、便宜的にその直前までを江戸時代の範囲とします。
すると、この1603~1867年(265年間)を1年に縮めて、そこに歴代15人の将軍の在任期間を当てはめると、以下の通りになります。
家康が将軍だったのは1/1~1/2の2日だけ。秀忠が1月の大部分、家光が2月から春先にかけて将軍を務め、5代目綱吉が死去したのはもう初夏。吉宗はちょうど1年の真ん中(つまり江戸時代の真ん中)前後に活躍。秋は大半が11代家斉(一番在任期間が長い)の治世。などのことが分かります。
日本史でやってみる
では、江戸時代に限らず、日本史全体を1年で例えてみます。12/31の24:00はこの記事が出た直後の2025年とします。
問題はどこを「最初」とするか。これによって様子が大きく異なります。
縄文時代は13000年前(BC11000年)頃に始まったという説が多いようなので、仮にBC11000年ちょうどを1/1に定めると、以下の通りになります。
縄文時代なげ~!!
次の弥生時代が始まるのは、BC300年頃のことらしいのですが、上の基準で考えると、なんとBC300年は10/28! もう年末の足音が聞こえてきそうな時期ですね。来年のハロウィンは、ぜひ縄文人か弥生人の仮装で(笑)!
さすがに縄文時代が長すぎたので、卑弥呼が魏に使者を送ったとされる西暦239年を1/1に定めてみると、こうなります。
卑弥呼の時代は弥生時代の末期なので、すぐ古墳時代に入ります(これも具体的に何年かは決められませんが)。春の間は天皇が親政を行っていますが、5月~6月頃になると、藤原氏による摂関政治が開始されます。汗ばむ季節になると武士が登場し、鎌倉、室町時代が夏真っ盛り。残暑厳しい戦国時代の末に、江戸幕府が開かれる頃にようやく涼しくなってきます。そして慌ただしい年末に、日本は近代化、戦争、高度成長期と、やっぱり慌ただしい近現代史を歩むことになります。
アメリカ史
日本より歴史の“短い”アメリカ。もちろん先住民は2万年以上前からアメリカ大陸に住んでいますが、ここでは合衆国の前身であるイギリス植民地時代以降に限ってみます(先住民の皆さん、ごめんなさい)。始まりは1607年のヴァージニア植民地建設の年としました。日本史でいえば、江戸時代~現在とほぼ重なります。
すると、最初に独立する13の植民地が揃ったのが4月半ば。独立を宣言した1776年は5/28に当たります。夏の間はずっと西部開拓が進み、8月半ばに南北戦争が勃発。9月半ばにフロンティアが消滅し、アメリカは中南米や太平洋へ繰り出していきます。10月中に第二次世界大戦を終わらせ、冷戦は11月いっぱい続きました。12月最初の週はアメリカ一強時代としてこの世の春(ややこしい)を謳歌していましたが、12/11に9/11同時多発テロが起こり(やっぱりややこしい)、ここからテロとの戦いを続けることに。
フランス史
続いてヨーロッパ。ここではフランスを見てみます。始まりはメロヴィング朝フランク王国の成立(クローヴィスの即位 481年)としました。
イギリスとの百年戦争は真夏に行われ、フランス革命は木枯らし吹き荒れる晩秋。現代(20世紀以降)が年末になってしまうのは、この仕様上、仕方のないことですが、まあフランスも年末は忙しいですね。
中国史
今度は日本より長い中国史。この国もどこをスタートとするか迷います。ここでは「中国4千年の歴史」にあやかり、実在がイマイチはっきりしてはいないのですが、夏王朝の成立(BC2070年)にしてみました。
すると始皇帝が中国を統一するのでさえ1年の半ば近く。三国志の時代が7月後半、唐がだいたい9月いっぱい。約300年続く清の開始でさえもうだいぶ年末です。そして現在の中華人民共和国が成立したのは新年1週間前のクリスマス。長い中国史の中では本当に最近という事になります。
え、中国は旧暦を使え?まあ固いこと言わずに…
エジプト史
続いて大御所を。エジプト史の始まりは、メネス王がBC30世紀にナイル川下流域を統一したと考えられていることから、キリ良くBC3000年としました。
5千年におよぶ歴史を持つエジプトはこんな感じ。
ピラミッドが建設されたのは、遅くとも中王国時代くらいで、この表だと春頃までですが、ファラオをトップとする時代は、クレオパトラがローマに滅ぼされる8月頭まで続きました。そう考えると「1年」の半分以上は、ファラオ時代になってしまいます。エジプトにアラブ人が住み着き、イスラム教が広まるのは9月以降の事で、エジプト史全体から見れば、実はわりと「最近」なのかも。
人類史
最後に人類(ホモ・サピエンス)の歴史を見てみましょう。諸説あるものの、一般にホモ・サピエンスが誕生したのは20万年前と考えられています。これを1/1にしてみると・・・
農耕が始まった約1万年前でさえ、もう12月。最初の古代文明が築かれたのは12/23でした。12/31が始まったのが約550年前の出来事なので、それ以降(産業革命、2度の世界大戦、人口爆発など)はすべて1日以内の出来事ということになります。そう考えると地球史ではもちろん、人類史全体から見ても、人類がこれだけの高度な文明を築いたのは、本当に直近の出来事なのですね。
逆を言えば、人類史の大部分は自然と共に生き、火や道具を使いながらも、いわゆる原始的な生活を続けていたことになります。高度な文明を作り上げ、一方で地球環境を傷めつけている今の時代こそ、人類史の「例外」なのかもしれません。